「食と健康」の提言➠生活習慣病を防ぐ「食事改革」

「食事改革」フード トランスフォーメーション(FX)

 忙しい毎日が続くと、「食と健康」を考える余裕がなくなってしまいます。その結果、食事は好きな食べ物ばかりに偏り、食品添加物だらけの食品でも気にすることなく「安さ」や「手軽さ」で食べてしまうこともあります。特に幼年期の子供が自分の好きな食べ物を欲しがれば、周りで止めるのは容易ではありません。そうした食生活を放っておくと、病気に対する不安がだんだん増して、いつしか病院通いが始まるかもしれません。しかし、医者が治せる病気は限られています。医者は「診察」という言葉があるように、病気を診つける専門家ですが、万病を治す専門家ではありません。特に、病気の根源が食習慣や栄養の偏りが続いていた場合には、医者の手当は期待できない。自分で食を改めるしか方法はありません。

 長く続いた悪しき食習慣を改め、自分や家族の健康を取り戻そうとすれば、思い切った「食事改革」を実践することです。

 私たちが提唱する「食事改革」とは、玄米又は雑穀米ご飯、そして4色以上の緑黄色野菜を使った野菜中心の食事です。料理方法はまったく自由です。「食事改革」のネライは、野菜に多く含まれている①食物繊維、②ビタミン、③栄養塩類(ミネラル)などの栄養素と、④抗酸化物質を、日頃の食事によって体内にとり込むことです。

病気の根源を断つための「良質な食事」と「自然治癒力」

 「偏った食事」が病気の根源であれば、それを断つには「良質な食事」を摂ること、すなわち「食事改革」が必要です。人間は、口に入る食べ物から「栄養」を摂取し、体力と精神力を蓄えることができます。安価で見栄えの良い添加物だらけの食品はなるべく避けたいものです。しかし、やむを得ず病気を患ったら、病院に行く前に自分の力で病を回復しようとする気概を持ち、「自然治癒力」にも頼ることができます。何故かと言いますと、栄養の行き届いた「良質な食事」は、体力ばかりでなく心の不調に陥らないよう精神力を強化し、「自然治癒力」にも力を与えることが報告されているからです。つまり、「良質な食事」に切り替える「食事改革」の実践が病気の根源を断つというわけです。

「食事改革」の実践と社会的意義

 これまでの「偏った食事」を見直し、「食事改革」を実践するには食べ物への投資が日々必要になります。この投資は、一つは病気への不安解消と病気になった時の支出を減らすためですが、もう一つは公的な医療費や社会保障費等の社会的コストを減らすことになります。社会的コストが減れば一人当たりの負担割合も減ることになります。そして、多くの人が「食事改革」を決断して実践すれば、今後ますます増え続ける医療費の削減につながるので社会的意義もあります。

アトピーとは?

 アトピー性皮膚炎は、乳幼児から大人まで罹患する人が多い病気ですが、「アトピー」とは、「原因不明」という意味だということを知る人は少ないようです。いずれにしろ、「原因不明」とは原因が特定できていないということですが、近年罹患者が増えている現状を考えますと、食べ物や空気、化学物質、排気ガス、その他口に入るものや肌に触れるものに由来しているのは確かではないでしょうか。そのように考えると、食品添加物をはじめ生活上の添加物、例えば歯磨き粉や化粧品、香水スプレー、医薬品等も疑う対象になります。

アレルギー物質について

 近年、食品によっては微量な摂取でも呼吸困難やじんましん等のアレルギー症状を引き起こす事例が目立っています。
 最近の報道(2023年12月18日/山口新聞)では、乳幼児の胃腸に症状が現れて嘔吐や下痢、血便などを引き起こす「消化管アレルギー」(新生児・乳児食物タンパク誘発胃腸症)について、国立成育医療研究センターの研究チームが調査した結果を、アレルギーの国際学術誌に初めて発表しました。
 この症状は、約半数が生後一か月までに発症するなど生後間もない乳幼児に多く見られることから、発症原因であるアレルギー物質を除去するには母体の「食事」を見直す必要があるとのことです。
 アレルギーを起こしやすいアレルギー物質のうち、重篤な症状を引き起こし、発症者数が多いことから表示が義務付けられている“特定原材料”が7品目、“特定原材料に準ずるもの”として表示が推奨されている食品が21品目あります。

 参考のため、食品に対して表示が必要なアレルギー物質を記しておきます。

アレルギー物質

区分対象食品 28品目
義務表示(特定原材料)エビ、カニ、小麦、そば、卵、乳、落花生
推奨表示 (特定原材料に準ずるもの)アーモンド、あわび、いか、いくら、オレンジ、キウイフルーツ、牛肉、くるみ、さけ、さば、大豆、鶏肉、豚肉、バナナ、まったけ、もも、やまいも、りんご、ゼラチン、カシューナッツ、ごま

野菜の抗酸化力

 野菜の色素成分「ポリフェノール」は、酸化(細胞の老化)を防ぐ抗酸化物質です。抗酸化物質にはさまざまな種類と働きがあり、色の違う野菜を複数組み合わせるとカラダに良い働きがパワーアップできます。野菜摂取の目安は、1日4色以上とされています。

緑黄色野菜を含む6種類の野菜を使った料理例

(ベジタリアン弁当「ベイクドにがり豆腐」の副菜から) 

・焼き野菜のバルサミコマリネ (料理時間20分)

材料 6人分 

ズッキーニ1/2本、なす中1/2本、人参中1/2本、赤パプリカ1/2個、エリンギ中1/2本、オリーブオイル28g、材料Aバルサミコ酢大匙1(18g)、濃口醬油大匙1(18g)、薄口醬油大匙1、本味醂大匙1(18g)、米酢大匙1、塩少々、生ハーブ(ディル又はタイム)少々

作り方

ズッキーニ、なす、人参は5ミリ厚の輪切りにする。パプリカは縦8つ切りにし、長さを半分に切る。エリンギは長さを3~4㎝に切り、幅を5ミリ厚に切る。

②フライパンにオリーブオイルを温め、①を並べてサッと両面を焼き、焼き色を付けてバットに移す。焼き過ぎないこと。ズッキーニやパプリカは食感が残る程度に強火で焼く。

③ 材料Aをボウルに入れて混ぜ合わせ、焼野菜5品に回しかける。2時間以上置いて味をなじませる。

健康は「食事」から 「運動」はその次

 生活習慣病や原因不明の病気、不治の病が若年層にも増えているそうです。これらの症状の多くは、食事との関連性が認められています。病名では、高血圧症、高脂血症、糖尿病、アトピー性皮膚炎、アレルギー症状、膠原病、免疫力低下、化学物質過敏症、冷え性、肥満、心的外傷後ストレス障害、心的不調、栄養失調(めまい、立ちくらみ、不眠、無気力等)などです。これら病の原因はほとんどが「不健康な食事」にあります。「運動不足」ではありません。 

 人生を健康に過ごしたい人は、日々の食事に気を配って、その次に運動も心がけるというのが順番のように思います。添加物だらけの食品や栄養が偏っている食事など、いい加減と思われる食べ物を「手軽で安いから」、「おいしいから」、「好きだから」と言って食べている人が、健康のために走ったりジム通いをしたりして運動に精を出る人がおられます。果たしてどちらの方が賢明な策だと言えるのでしょうか。

「食べる投資」ハーバードが教える世界最高の食事術(要旨抜粋)

 世界最高の食事術を説いた『食べる投資』(満尾正著、アチーブメント出版、2019年)という本があります。著者が本の最後で紹介している言葉があります。それは、チベット仏教の法王ダライ・ラマ14世が、「世間の人間を見て、最も驚くことはどんなことでしょうか」というインタビュアーの質問に答えたものです。「金を稼ぐために健康を害し、今度は病を治すために稼いだ金を使うこと」がその答えでした。
 本の著者はハーバード大学外科代謝栄養研究所で最先端の抗加齢医学を学び、2002年に日本で初めてのアンチエイジング専門病院「満尾クリニック」を開設しました。著者が留学していた1990年代の米国では「予防医療に100の投資を行えば300の医療費を節約できる」という医療経済学が提唱されていたそうです。
 食が栄養の基盤であり、栄養知識を身につけて実践することが「健康」への投資になるというわけです。

 以下は、『食べる投資』(満尾正著、アチーブメント出版、2019年)の主な項目から要旨を抜粋したものです。

欧米の予防医学会が掲げている最大のテーマは、「ビジネスパーソンの健康をいかに保つか」です。企業がサスティナブルな経営をしていくためには、社員1人ひとりのパフォーマンスをアップしていくことですが、社員の心身のコンディションを最適な状態になるようサポートすることで、生産性の向上だけでなく、労働者のうつ病の発生を抑え、離職防止にもつながるという考え方です。

最大リターンを得る投資は「食事」です。自分の口に入れるものは何でできているのか。誰がどのように作り、それを食べると自分にとって何がプラスになるのか?
「食事」は自分の頭と感性を働かせて丁寧に選びとってほしいのです。

『食べる投資』(満尾正著、アチーブメント出版、2019年)